事例紹介
定額手当の支給に関する判例
時間外手当に該当するかどうか
時間外労働等に対応する定額の手当を支給する場合、これが他の賃金と明確に区別され、労基法所定の計算額以上であれば、時間外手当を支払ったものとされます。この定額の手当が、時間外手当に該当するかどうかが問題となります。
(1) 肯定例
名鉄運輸事件(名古屋地判H3.9.6判タ777号138頁)
一般路線貨物自動車運送業を営む使用者において、運行・集配等の業務に従事している労働者が、時間外及び深夜労働に対する割増賃金を請求した事案。運行乗務員に支給される運行手当をもって深夜勤務時間に対する割増賃金として扱うことができるかが争点となった。裁判所は、就業規則上、運行手当が運行乗務員の深夜時間勤務に対する割増相当額として支給する旨定められているのに、作業等が深夜に行われたか否かの区別なく支給されているが、仕事の性質上恒常的に深夜勤務をせざるを得ない路線乗務員にのみ支給されており、これを深夜勤務時間に対する割増賃金として位置づけることも法律上可能であり、法所定の計算方法による割増賃金額が支給額を上回る場合にその差額を請求することができるにとどまるとして、運行手当を割増賃金と扱うことを肯定した。
(2) 否定例
東建ジオテック事件(東京地判H14.3.28労判827号74頁)
労働者が、所定ないし法定休日と、法内ないし法外超勤に対する手当、深夜業手当の支払いを請求した事案。割増賃金の算定基礎に、労働者に支給されていた職務手当が含まれるか、また、この職務手当の一定部分が割増賃金の一部になるかという争点につき、裁判所は、この職務手当は、所定外労働に対応する部分と職務・職責に対応する部分が区別されていないから、割増賃金の算定基礎から除外することも、割増賃金の一部払いとみることもできないとした。